「元妻と仲良くするのがアメリカ流」だと思い込んでいた話

国際結婚

以前、我が家の「元妻専用・無料ロナルド便」事件簿をお届けしましたが、今日はその根っこにあった、私自身の盛大な勘違いについて書きたいと思います。

「郷に入っては郷に従え」の呪い

渡米前の私は、こう覚悟を決めていました。

「アメリカは進んでる。元夫婦でも家族ぐるみで仲良くするのが文化なんだ。国際結婚するなら、そのくらい受け入れなきゃ」と。

だから、元妻アンネを含めた顔合わせの食事会にも、コンプライアンス精神むき出しの大人の笑顔で参加。本棚の不法占拠にも、郵便物のダイレクトメール弁護にも、鍵の110番出動にも、「これがアメリカ流のマナーなんだ、私が学ばなきゃいけないんだ」と、律儀に自分を納得させようとしていました。

元監査人の私が、なぜこんな明らかにおかしい「社内規定」を、疑いもせず受け入れていたのか。今思えば謎です。

セラピストに言われた、一言

渡米6ヶ月の大爆発を経て、セラピストに相談したときのことです。

「日本人にありがちなんですが」と前置きしたうえで、こう言われました。

「アメリカでは元夫婦も仲良くするものだと思い込んで、無理して我慢している人がいるんです。でも、そんなことは全くありません。アメリカ人のクライアントの中には、元奥さんと絶対に顔を合わせたくないからと、モールのような場所を待ち合わせ地点に決めて、子供をそこに下ろす。元奥さんは少し時間差で同じ場所に来て、子供を拾っていく。そんな風に、顔を合わせずに受け渡しを成立させている人もいますよ」

……え? 会わなくていいの?

私はてっきり、「アメリカでは元妻とも家族の一員として付き合うのが常識」で、それができない自分の方がおかしいのかと思っていました。だって日本にいたら、そもそも元妻に「会う」という発想自体がほぼ存在しません。離婚したらそこで関係は基本的に終わり。だからこそ、アメリカに来て「こっちでは違うらしい」と聞かされると、その情報を鵜呑みにするしかなかったんです。

思い込みの正体

整理すると、こういうことだったんだと思います。

  • 日本にいたときの前提:元妻と交流するという選択肢自体がほぼ存在しない
  • アメリカに来てからの誤解:「これがアメリカのマナーなんだろう」と、勝手にルール化して受け入れてしまう
  • 実際:アメリカ人自身も、会う・会わないは完全に個人の選択。仲良くする人もいれば、セラピストのクライアントのように徹底的に距離を置く人もいる

つまり私は、存在しないルールに、自分から進んで従っていたわけです。しかもそのルールを作ったのは、アンネでも夫のロナルドでも義母の梅子でもなく、私自身の思い込みでした。これ、監査人としてあるまじきミスです。自分の「内部統制」、機能してなかった。

Redditを覗いて分かったこと

最近、アメリカのReddit(「アメリカ版の2ちゃんねる(5ちゃんねる)」のような巨大匿名掲示板サイトです。趣味、ニュース、ゲームなど、あらゆるテーマごとにコミュニティが存在し、世界中のユーザーが日々本音で情報交換をしています。)も読むようになったのですが、これがまた興味深い。「元妻が家族の中心のように振る舞う」「義母が元妻を優先する」という悩みは、日本人に限った話では全くありませんでした。むしろ、アメリカ人自身も同じテーマで山ほど愚痴っていて、そこでは「会わない」「境界線を引く」という選択肢が、ごく当たり前の対処法として語られていたんです。

つまり、私が「アメリカ流だから」と自分に強いていた我慢は、当のアメリカ人からしても「そんなの我慢しなくていい」と言われるようなものだったということです。

これからは、自分の心地よい距離感で

というわけで、今の私のスタンスはこうです。

エミリー(義娘)の卒業式のような、最低限の義務には参加する。でもアンネとの境界線は、1ミリの隙もなく完全閉鎖する。

これは冷たいことでも、大人げないことでもありません。むしろ、存在しないルールに縛られるのをやめて、自分の心と尊厳を守るための、極めて合理的な選択です。

同じように「アメリカだから」「郷に入っては郷に従えだから」と、必要以上に我慢してしまっている人がいたら、伝えたい。

そのルール、誰も強制していません。あなたが勝手に、真面目に、律儀に守っているだけかもしれません。

境界線は、引いていい。それだけです。

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