【アメリカ乳がん検診】待合室で出会った”謎のおばちゃん”に人生を変えられた話

アメリカサバイバル奇譚


アメリカの狂った歯医者、精神科医のストライキと、これまで数々の医療バグをサバイブしてきた私。今回お届けするのは、アメリカの予防医療システムに重い腰を上げて突撃したときのお話です。

パップって何?から始まった予防医療への重い腰

アメリカに住んでいると、定期的に病院から「検便定期便」「マンモグラフィ(乳がん検診)」「パップテスト(子宮頸がん検診)」の案内が届きます。しかし、当時の私はすべてスルーしていました。

だって、アメリカの医療なんて「ジャンク(ガラクタ)」だし、英語わかんないし、なるべく関わらない方が身のためだと思っていたのです。夫のロナルドに聞いても、例のごとく「いい保険だから!」の一点張りで、具体的な有益情報は一切くれません。 

そんなある日、職場の同僚に「パップテストは絶対に受けた方がいいよ!」と強く勧められました。「パップ……? パップって何それ、美味しいの?」状態だった私ですが、同僚に仕組みを質問攻めにするうちに、「あれ? もしかして私、ちゃんと受けた方がいいのでは……?」と思い直したのです。

ちょうどそんなタイミングで、再びマンモグラフィの案内が届きました。実は私、日本では「エコー(超音波)派」でした。かつて日本で一度だけマンモグラフィをやったとき、おっぱいがこれでもかと平らに潰されるあの痛みに絶望し、「二度とやるか!」と誓っていたのです。しかし、アメリカではマンモが主流。意を決して、私は現地の検査へと突撃することにしました。

待合室の最強サバイバー

恐怖の「おっぱい潰し」の待合室でドキドキしながら座っていると、静かな空間に一人の女性の声が響き渡りました。「私、以前乳がんをやったから、この検査は本当に毎回ナーバスになっちゃうのよ!」とかなり声高に自分の経験を周囲に話しているローカルの女性を発見。 

そして検査が終わって廊下に出たタイミングで、なぜかその女性と私のおしゃべりに火がつきました。そこから、彼女のマシンガントークによる「アメリカ医療サバイバル講座」が始まったのです。

「いい? この病院には癌の専門家はいないから、あんたお金が稼げるようになったら、すぐに別の大きな専門病院に行きなさい!」「あと、65歳までには絶対にメディケア(高齢者向け公的医療保険)に入るのよ! そのためには半年前から申し込まないと間に合わないんだから!」 「もし万が一、この癌だったら、あの病院のこの先生が一番いいからね!」 

初対面の私に、ガチすぎる口コミ情報を次から次へと伝承してくれるこの女性。 しかし、トークの刃は医療だけでなく、私のプライベートにまで切り込んできました。 

おばちゃん:「あんた、義理の娘(夫の連れ子)はいるの? 一緒に住んでるの? 大変ねぇ、いじめられてない?」 私:「いや、義娘にはいじめられてはないんですけど……実は夫の元妻が……」

私がそこまで言った瞬間、彼女は私の目をバシッと見据えて、魂のシャウトを放ったのです。

「あいつらはね、子供をダシにして家を利用してくるのよ!!!」

おおおおお……!!!

その瞬間、鳥肌が立ちました。

私が誰にも説明できず、一人で抱え込んでいた違和感を、この人は初対面で言語化してしまったのです。

思わず心の中で絶叫しました。私が日頃から感じていたあのモヤモヤ、あの境界線(バウンダリー)の歪みを、通りすがりのアメリカ人が一瞬で見抜いて全肯定してくれたのです! 自分の正気を疑いそうになっていた私にとって、それは救いの神託のようでした。

興奮する私に、その女性は「サイコロジートゥデイドットコムに行きなさい、そこなら人間関係の悩みなんて何でも答えてくれるから!」と熱弁してくれました。

得意げに披露された、謎の苗字「アシジ」

会話が最高潮に盛り上がったところで、私が「実は私、日本人なの」と言うと、その女性はパッと顔を輝かせて、めちゃくちゃ得意げに言いました。

「実はね、私の苗字も日本語なのよ!」

えっ!? 一瞬、日系人の血が流れている人なのかな?でもそう見えねえな と思って、ワクワクしながら「なんていう苗字なの?」と聞いてみました。すると彼女は、さらにこれ以上ないドヤ顔でこう名乗ったのです。

「アシジよ!!」

私の脳内では必死に

「足路?」

「芦寺?」

「葦地?」

と漢字変換が始まったのですが、どれもしっくりきません。

……アシジ?????私の脳内漢字変換システムが完全にフリーズしました。日本語に聞こえる……か……? いや、1ミリも日本語の苗字には聞こえませんw。これからは親しみを込めて、アシジおばちゃんと呼ばせていただきます。

こうして私は新しくできた心の親戚、アシジおばちゃんへの感謝を胸に、私は病院を後にしたのでした。

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