以前「境界線」について、ちょっと真面目に語ってしまいましたが。
今回は、その「境界線ゼロOS」の家族たちが、アメリカの壮大なイベントに放り込まれた結果、どのような大バグを引き起こしたかという、リアルな実証データ(実話)をお届けします。
主役は、私のステップドーター(継娘、つまり夫の娘)のエミリー(仮名)。 昨年、彼女がめでたく高校を卒業したときのお話です。
目次
1. 炎天下のスタジアム、せめぎ合うフォーメーション
アメリカの高校の卒業式は、とにかくスケールが日本と違います。 青空の下、広大なフットボールスタジアムのフィールドにずらりと椅子が並べられ、巨大スクリーンがそびえ立つ。 まさに「壮大」の一言です。
もちろん、この一大イベントに我が家(私、夫・ロナルド、元妻・アンネ、姑・梅子)が全員参加しないわけがありません。(義父のカーネルは腰痛にて欠席)
会場に到着すると、先に入っていた元妻・アンネをなんとか発見。 ここで、元監査人の私は、瞬時に「座席フォーメーション」の監査に入ります。
というのも、普段みんなは「日本語が通じるから」という超適当な理由で、姑の梅子を私の隣に配置しようとするのです(私に対する配慮がゼロ!)。
「今回は、そのバグは許さない」
私はスッと身をかわし、梅子をアンネの隣に座らせることに成功。 並び順は、【アンネ➔梅子➔ロナルド➔私】。 よし、完璧なディフェンスライン(境界線)です。
2. 主役を見逃し、アリを激写するカメラマン
いよいよ式が始まり、ガウンをまとった卒業生たちがゾロゾロと入場してきました。 あまりの人の多さに、全員が目を皿のようにしてエミリーを探します。
「あ!エミリーじゃない!?」 「違う、あれは別人!」
とかなんとか騒いでいるうちに、 ……はい、主役のエミリーの入場、思いっきり見逃しました(笑)。
何のために来たのよ!と自分にツッコミを入れつつ、その代わりに、毎週のように我が家に泊まりに来ている親友のヘレナちゃん(モデルばりの超美少女)が入場してきたときは、なぜかガッツリ発見。 望遠レンズもないのに「ヘレナちゃーーん!!」と必死に日本から持参したSONYの一眼レフのシャッターを切りました。
後で見返したら、「アリのサイズ」で写っていました。
3. SONYの一眼レフと、ステップマムの誇り
やがて、ステージ上で一人ずつ名前が呼ばれ、巨大スクリーンに「今の顔」と「赤ちゃんの頃の写真」が並んで映し出される感動の瞬間がやってきました。一人一人がハリウッドのスターみたいに(言い過ぎ?)画面に映し出されるのは圧巻。これはわかりやすくちゃんと写真が撮れました。
式が終わると、保護者たちもフィールドに降りて、卒業生と写真を撮るカオスタイムがスタート。 とにかく人が多すぎて、エミリーを見つけるだけでも一苦労です。
ようやく見つけると、ロナルドとアンネは何やら二人で真剣に話し込んでいて、完全に使い物になりません。 そして案の定、人混みの中で元妻の梅子が迷子(行方不明)になりました。
しかし、ここからが「ステップマム・チャコ」の出番です。
この日のために、私は自前の「SONYの一眼レフカメラ」を首から下げて参戦していたのです。 これを見たエミリーの目が、キラーンと光りました。
「チャコ! こっち! こっち来て!」
エミリーに腕を引っ張られ、ロナルドたちを置いてスタジアムを爆走する私。 エミリーは、学校のイケてる同級生グループを見つけるたびに、私をこう紹介してくれるのです。
「みんな聞いて!こちら、私のステップマム(継母。私のことよ)のチャコ!!」
キュートな高校生ボーイズたちが「ハーイ、チャコ!」と白い歯を見せて微笑みます。 おばちゃん、もう大興奮。 「ハーーイ!おめでとう!」と叫びながら、SONYの一眼レフで彼らを激写しまくりました。 この時ばかりは、カメラを持って行って本当に良かった、ステップマム冥利に尽きるわ!と胸が熱くなりました。
4. ステージ上の迷子と、元妻(影のボス)アンネの一撃必殺
しばらくエミリーの「専属パパラッチ」として走り回っていると、探していたロナルドたちが焦った顔で合流してきました。 「どこに行ってたんだよ! 探したぞ!」
いや、主役を連れて写真を撮ってただけよ、と呆れつつ、ふとステージの上に目をやると。
……なんか、ステージのど真ん中で、ボケっと立ち尽くしている梅子(姑)が見える。
「なんであそこにいるのよ!!!」 そのシュールすぎる光景に、エミリーは指を差して大爆笑。
さすがに見かねたヘレナちゃん(モデル美女)のママが、 「……ねぇ、あのステージの上の人、もしかしてエミリーのおばあちゃん?」 と気を遣って話しかけてくれ、わざわざステージまで行って、迷子の梅子を優しく回収してきてくれました。ヘレナママ、本当にありがとう。
ようやく全員が揃い、写真撮影も終えて、スタジアムを後に帰途につきました。
ここで、どうしても諦めきれない梅子が、今日10回目くらいの提案を口にします。
「ねえ、この後みんなで卒業祝いのディナーに行かない?」
しかし、ティーンエイジャーのエミリーたちは、これから友達同士で朝までパーティーへ繰り出す予定。「行かない」とあっさり断られました。
それでも往生際の悪い梅子。 車に向かって歩きながら、今度はアンネ(元妻)にターゲットを絞ります。
「お祝い、ディナーどうする? 行きましょうよ」
それに対する、元妻・アンネの返答がこちら。
「NO(行かない)」
秒殺。1ミリの容赦もない、完璧な拒絶。
普段、クリスマスなどのイベントには異様な執着を見せて参加してくるアンネ。 (※ちなみにユダヤ教徒のアンネがクリスマスに毎回すっ飛んでくる本当の理由は、梅子があげる『現金プレゼント』がお目当てだからだと私は踏んでいます。)
かつてクリスマス当日に体調不良で欠席した際、彼女は後日、執拗にこう主張してきたのです。 「エミリーのために、改めてプレゼント開封ディナーをやりましょう!」
……あのさ、主役のエミリー本人は、とっくにプレゼントを開けて使い倒して大満足してんのよ(爆笑)。 主役不在のまま「未回収の現金インセンティブ(梅子からの恒例のクリスマス現金ギフト)」を取り立てようとするその執念。私の監査眼に狂いはありませんでした。
しかし今回は、主役のエミリーもその場におらず、その場で現金が手に入る見込みもない。 「キャッシュ(旨み)にならない梅子と過ごす1秒なんて、1セントの価値もないのよ」と言わんばかりの、冷酷で完璧な境界線の壁がそこにそびえ立っていました(笑)。
アンネはそのまま、あばよとばかりに一人でスタジアムの彼方へ去っていきました。

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